脳血管

脳卒中の分類

脳卒中とは

 脳の血管が詰まったり破れたりして、脳の機能が障害され、手足に麻痺が出たり、言葉が喋りにくくなったり、意識が悪くなったりする症状が出る病気を総称して脳卒中といいます。脳卒中は、日本人の死因の第4位、寝たきりになる原因の第1位の病気です。Time is moneyという言葉になぞらえて、Time is brainという言葉があります。脳卒中は、様々な神経後遺症が残る可能性があるため、できるだけ早く検査、治療を行うことが重要です。

脳卒中の分類

 脳卒中には、虚血性出血性があります。虚血性は、脳の血管がつまるタイプで、これには一過性脳虚血性発作と脳梗塞があります。一過性脳虚血性発作は、一過性に神経症状が出現するものの、画像上、脳梗塞を認めないものと定義されます。一過性脳虚血性発作は、脳梗塞の前駆症状と捉えれば良いとされています。脳梗塞は、さらに、①ラクナ梗塞②アテローム血栓性脳梗塞③心原性脳塞栓症に分かれます。出血性には、脳の血管が破綻して脳実質内に出血する脳出血と、脳の血管にできたこぶ(動脈瘤)が破裂してくも膜下腔内に出血するくも膜下出血があります。

動脈硬化の病態生理、血栓症と塞栓症の違い

 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙習慣のある患者では、血管壁の内膜が損傷されます。内膜が損傷されると、血液中の白血球が内膜をすり抜けて血管壁へ侵入します。血管壁に侵入した白血球は、泡沫細胞(コレステロールなどの脂肪成分を蓄えた細胞)へと変化し、炎症を引き起こします。やがて、プラークが形成され、血管壁が分厚くなるため、血管内腔が狭くなってきます。血管内腔が狭くなることを狭窄といいます。血栓症とは、動脈硬化による狭窄部で形成された血栓が血管を閉塞し、末梢臓器の血流障害をきたすことです。塞栓症とは、他の部位で形成された血栓が、血流に乗って飛んできて血管を閉塞し、末梢臓器の血流障害をきたすことです。心臓から血栓が飛んできて、脳の血管を閉塞した場合を心原性脳塞栓症といいます。アテローム血栓性脳梗塞とは、動脈硬化を基盤とした脳梗塞のことで、血栓症と塞栓症のどちらも起こす可能性があります。動脈硬化による狭窄部で形成された血栓が、末梢の動脈に飛んで閉塞することを、artery to artery embolism(動脈原性の脳塞栓症 AtoA)

出血や梗塞の画像所見

 脳梗塞は、CTで低吸収として写りますが、発症から数時間以内の急性期脳梗塞は、CTで異常所見を認めません。発症後数時間してから、ようやく淡い低吸収域として描出されます。したがって、急性期脳梗塞にCTはあまり有用ではありません。急性期脳梗塞にはMRI拡散強調画像が有用です。MRI拡散強調画像では、脳梗塞は発症30分〜1時間程度で高信号で描出されます。一方で、脳出血やくも膜下出血の出血性疾患は、発症直後からCTで高吸収域に描写されるため、CTが有用です。